ico_imgインタビュー:LEBO ROBOTICS株式会社(東京都杉並区)

ロボット、AIを駆使して風力発電メンテナンスの省人化を牽引

浜村圭太郎氏
LEBO ROBOTICS株式会社 代表取締役 浜村圭太郎氏
点検補修
ブレードを点検・補修するロボット(左)と、従来の人間による作業(右)

地球温暖化を防ぐ有効な手段となる、再生可能エネルギーの導入。LEBO ROBOTICS株式会社は、そのひとつである「風力発電」を担う風車を点検・補修するロボット開発等を通じて、風力発電の拡大を支援しています。

 

同社代表取締役の浜村圭太郎氏に、創業の経緯や事業内容、将来の展望を伺いました。

●正確で低コストのAIブレード外観点検で“予防保全”が可能に
AIブレード外観点検の仕組み
AIブレード外観点検の仕組み。地上に設置した望遠カメラでブレードをくまなく撮影し、画像をAIで診断。ダメージ(青色四角内)の詳細、リストなどを見やすいフォーマット(画面右端)で提供する。
イメージ
人間による高所作業のリスク、コスト高の問題から、多くの風力発電所で点検の間隔を引き延ばされ、その多くは4年に1度の頻度になっているという(①左上の図版)。しかし、AIブレード外観点検によって、頻繁に点検でき、発電ロスを大幅に減らすことができる(①左下の図版)。②は地上から点検・補修ロボットを遠隔操作しているイメージ

2030年、風車の設置基数は、日本・世界共2020年比で3倍になるといわれています。さらに、日本がカーボンニュートラル実現を目指す2050年には、2020年比で8倍になるとの予測もあります。このように急速な拡大が見込まれる風力発電ですが、一方で、不安材料も指摘されています。

 

それが風車メンテナンスにあたる人手の不足です。マンパワーの不足はすべての業界に共通していますが、風力発電はその特殊性ゆえに、深刻な問題となっています。一般的に、人間による風車メンテナンスは、ナセル(発電機を収めたタワー上の筐体)を起点に、ロープで作業者をブレード(羽根)近くに吊り下ろし、高さ60~80mの空中で行われています。大きな危険が伴うため作業できる人材は限られております。

 

「そうした状況に対し、当社では補修・点検を行うロボット開発のほか、地上カメラを使ったブレード表面の撮影映像をAIで診断し、ダメージをリスト化する業務、さらに、ブレード保護塗料・補修材等の販売も行っています。AIブレード外観点検は、ブレードを全面的に撮影するので後から振り返ることができる上、人間が行う作業スピードの5~6倍速く、1日で10~12機の撮影が可能です」

 

風車は、厳しい自然環境にさらされているだけに、ダメージを受けやすいことがウイークポイントです。ブレードに大きな損傷が生じるとブレードの回転効率が下がり、発電のロスが発生しますが、人間による高所作業の危険性や高コストの問題から、頻繁に補修を行うことができません。

 

「しかし、当社のAIブレード外観点検なら正確な上に比較的低コストなので、あまり間を開けず定期的に点検でき、“予防保全”が可能になります。結果、高い発電効率を維持できるのです。こうした強みが評価され、2022年は国内で約200機に、当社のAIブレード外観点検サービスを提供させていただきました」

                                  
●東京都×ドイツNRW州の中小企業相互支援で欧州拠点設置へ
ロボットによる点検・補修サービスの潜在的な市場
ロボットによる点検・補修サービスの潜在的な市場は、2018年時点で1600億円。2030年には3000億円に拡大すると予想されている。世界の風力発電導入量はGlobal Wind Energy Councilの予測を活用

大学卒業後、豊田通商に勤務していた約20年の間、化学品の貿易に従事し、主にアジア、インド、欧米とのビジネスを行っていた浜村氏は、2010年に社内で風力発電向けの化学品事業を立ち上げました。発電事業者や風車メーカーとの取り引きを通じて、風車メンテナンスのロボット化、省人化のニーズを認識。風力発電拡大に専念するため、2018年にLEBO ROBOTICS株式会社を起業し、独立を果たしました。

 

起業当初、東京都のロボット活性化事業の助成金を受給し、ロボットを形にすることができたおかげで会社を軌道に乗せることができたと浜村氏は言います。

 

「助成金に加えて、仕事をする場についても東京都から手厚い支援を受けています。当社は杉並区荻窪のシェアオフィスからスタートし、その後、昭島市の産業サポートスクエア・TAMAに移転しました。現在は、産業サポートスクエア・TAMA内に2つの拠点を持っています。ひとつは多摩テクノプラザ内のラボで、もうひとつは中小企業振興公社内のオフィスです。前者は、床に高い耐薬品性を持つ特殊なコートがされており、1㎡当たり、300~400kgの荷重に耐えられる、天井が約4mあってオープンスペースが確保されているなど、ロボット開発に適した施設が整えられています。後者はオフィス棟で、経営、営業等のデスクワーク、ミーティングなどと使い分けています。こうした充実した環境を用意していることに対して、東京都のスタートアップ企業支援の意欲を感じます」

 

また、国外市場への展開を支援する仕組みの面でも、東京都はアドバンテージがあるとのこと。

 

「東京都がドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州(NRW州)と締結した中小企業の相互支援を通じてお誘いを受け、2023年5月、ドイツでの産業展示会に出展する東京都のブースに当社の展示コーナーを設けていただけることになりました。風力発電は、ヨーロッパ、アメリカが先進地域であり、近い将来、ヨーロッパ拠点を置くことを計画しているのですが、その意味でドイツでの展示会は良い足掛かりになるのではと期待しています」

 

さらに、東京の地の利も非常に魅力的だと話します。

 

「国内の風車がある場所は北海道や東北、四国、九州などが多く、そこへの移動に飛行機は不可欠。羽田は直行便も多く、各地へのハブとして優れた結節点です。また、保守点検を行う場所が地方である一方、発電施設を所有するオーナー企業の本社はほとんどが都内なので、打ち合わせ、プレゼンなどに行きやすいことも東京立地のメリットです」

●東京の利点を活用して風力発電拡大に力を尽くす
ロードマップ
LEBO ROBOTICS株式会社が描くロードマップ

今後の展望を伺いました。

 

「再生可能エネルギー普及へのさらなる貢献として、風力発電のメンテナンスを行うロボット開発を進めていきます。これによって風力発電の採算性が上がり、風力発電がどんどん広がっていく世の中を目指します。まずはしっかり日本での風力発電事業者様に使っていただくとともに、ヨーロッパの大手事業者様にも、同様に認知していただくよう活動して参ります」

 

さらに、現在は半自動であるロボットの全自動化にもチャレンジするとのこと。実現の目途は2024年。全自動化でさらに省人化を進め、危険な作業に当たる人を減らして、人材配置の最適化を支援していくそうです。

 

「日本・世界の風力発電普及をサポートする企業として、東京の利点をフル活用し、躍進を続けていきます」

取材日:2023年(令和5年)1月18日(オンラインで取材、写真提供は同社より)

【企業概要】
  • 会社名:LEBO ROBOTICS株式会社
  • 住所:本社/
    東京都杉並区
    事務所/
    東京都昭島市東町3-6-
    産業サポートスクエア多摩306号
  • 代表者:代表取締役 浜村 圭太郎
  • 設立:2018年(平成30年)11月
  • 事業内容:建築サービス業、化学品卸売業、製造業
  • ホームページ:https://www.leborobotics.com/