ico_imgインタビュー:インキュベーションオフィス・TAMA(東京都昭島市)

ものづくり産業集積地・多摩でファブレス起業を力強くサポート

経営サポート館
インキュベーションオフィス・TAMAが入る経営サポート館。オフィスは3階に集まっている

メーカーにとって、起業時の“ハードル”になりがちなのが、製造のための環境や機器を確保すること。一般的には、工場用地、工場建屋、各種の機械、それを操作するオペレーターなどが必要となり、莫大な初期投資が求められます。まして東京都内で起業となると、地代、上物の費用は相対的に高くなると考えられます。

 

そこで、東京立地で、なおかつファブレスでものづくりをしたいと考えるベンチャー企業に注目してほしいのが「インキュベーションオフィス・TAMA」です。どの点がファブレス起業に適しているのか、オフィスを運営する、公益財団法人 東京都中小企業振興公社 多摩支社 多摩支社担当部長 須﨑数正氏に伺いました。

●販路拡大、資金調達、助成金、知財…中小企業振興公社が伴走
個室
個室は計6
現在2室募集している(2023.2.6時点)
会議室の写真
共用の会議室
応接室の写真
応接室

インキュベーションオフィス・TAMAは、「産業サポートスクエア・TAMA」の経営サポート館3階に設置されています。室数は計6で広さは約40~63㎡。鉄筋コンクリート造でしっかりした防音加工が施されており、大きな音を発する機器の試作なども気兼ねなく行えます。24時間365日利用可能で、もちろんセキュリティシステムも完備されています。

 

「賃貸借契約は当初3年で、再審査の上、2年以内の更新が1回のみ可能。通算で最長5年間入居いただけます。現在2室空きがあり、募集しております。対象者は創業予定の方、あるいは創業から7年未満の中小企業。業種はものづくりや研究開発を主とする製造業・情報通信業としています」(須﨑氏、以下コメントは同様)

 

また、中小企業振興公社が運営しているだけに、同公社から手厚いサポートが受けられることも魅力です。販路拡大、各種助成金情報、知的財産、資金調達、入居企業技術者との交流など、得意分野が異なるインキュベーションマネージャーが伴走支援します。さらに、著名講師によるセミナーや勉強会、オープンイノベーション志向の大手企業とのマッチングも行われています。

 

「法務や労務・知財及び企業マッチングなどの相談は、もちろん都内立地の中小企業も、ここへの来場、あるいはオンラインでの受講や参加が可能です。ただ、インキュベーションオフィス・TAMAに入居している企業なら、当然ですが、1・2階に下りるだけですぐに相談できます。外部の企業同様、予約は必要ですが、それでも圧倒的な近さは大きなアドバンテージです。コロナ禍以降、改めてface to faceの価値が見直されましたが、インキュベーションオフィス・TAMAの入居企業は、まさにこのことを実感しているのではないでしょうか」

                                  
●ワンストップの研究開発環境が整う、オフィス隣の「都産技研 多摩テクノプラザ」
パンフレット
「都産技研 多摩テクノプラザ」のパンフレット
パンフレット2
この施設からインキュベーションオフィス・TAMA入居企業に向けて仕事が発注されるケースもあるという

インキュベーションオフィス・TAMAの隣には、(独法)東京都産業技術研究センター多摩テクノプラザ(以下「多摩テクノプラザ」)があります。

多摩テクノプラザは、多摩地域の中小企業の技術支援を目的に、ものづくり企業の支援拠点として2010年に開設されました。特徴は、国内でも屈指のハード・ソフトの充実ぶりです。電磁環境試験関連の各種企画に適合したEMCサイト、高強度繊維・繊維強化材料の研究開発を支援する複合素材開発サイト、さらに基盤機器を整備した本館の3つで構成されており、多種多様な依頼試験、機器利用などが可能です。

 

「ものづくり系のベンチャーにとって、機器や試験を行う環境を確保することはそう簡単ではありません。その点、オフィスの隣にあり、ワンストップの研究開発環境で手厚い技術支援を受けられる多摩テクノプラザはとても信頼できる存在でしょう。もちろん、外部企業も多摩テクノプラザでの依頼試験、機器利用は可能ですが、やはりここでも、インキュベーションオフィス・TAMA入居企業の“圧倒的な近さ”が有利に働きます。また多摩テクノプラザの中には、複数年にわたり、研究・実験室として24時間365日利用できる賃貸スペースもあります」

 

ちなみに、産業サポートスクエア・TAMAには、多摩テクノプラザに加えて、地域の中小企業の人材育成や人材確保を支援する「東京都立多摩職業能力開発センター」、農林水産業の支援を行う「公益財団法人東京都農林水産振興財団」も。後者はものづくりと一見関係がなさそうに見えますが、農地で使う無人ロボットを開発する際、走行環境についてのアドバイスを受けた入居企業もあったとのこと。事業内容や製品の機能によっては、頼れる場所になりそうです。

                                  
●東京立地のメリット~『販路開拓』『人材採用』の機会に恵まれている
マネージャーが手厚いサポート
インキュベーションオフィス・TAMAでは経験豊富なインキュベーションマネージャーが手厚いサポートを行ってくれる

インキュベーションオフィス・TAMAのこれまでの入居企業が、恵まれた環境を活用して行っていた事業は、実に多岐にわたります。蓄電池のバッテリーシステム、炭素繊維混紗シートを用いたヒーター、大型LED投光器、携帯型電子治療器、ロールコーター、真空機器、電子ビーム描画装置、オゾン発生装置…これからも種類はさらに増えていくでしょう。

 

「多摩地域は、戦前、当時の日本の航空機産業を牽引した中島飛行機武蔵製作所があっただけに都内でもものづくりが盛んな場所です。そうした土壌を引き継いで、今も医療、精密機器、自動車、コンピュータなど大手メーカーの工場が集積していますし、研究・開発に取り組む大学も集まっています。それらの企業、大学とのマッチングも我々の仕事のひとつです」

 

最後にスタートアップ企業にとっての東京立地のメリットをうかがいました。

 

「持続可能なものづくり企業となるために、必要条件となるのが『販路開拓』と『人材採用』の2つ。いうまでもなく東京は両者とも非常に潤沢であり、スタートアップ企業にとって有利な環境といえます。インキュベーションオフィス・TAMAの最寄り駅はJR西立川駅で徒歩7分。青梅線特快利用なら、西立川から新宿駅までは約30分の近さです。ファブレスで、AI、IoT、ロボットなどの開発をお考えの方、ぜひ、インキュベーションオフィス・TAMAに注目してください」

取材日:2023年(令和5年)1月23日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスクを着用しております。)

【施設概要】
  • 施設名:インキュベーションオフィス・TAMA
  • 住所:東京都昭島市東町3-6-1
    産業サポートスクエア・TAMA
    経営サポート館
  • 運営:公益財団法人
    東京都中小企業振興公社
    多摩支社
  • 設立:2009年(平成21年)
  • 支援内容:起業、事業拡大を目指すものづくり企業のための支援施設
  • ホームページ:https://www.tokyo-kosha.or.jp/incubator/tama/