ico_imgインタビュー:コワーキング合同会社(東京都江東区)

優しい木の温もりも魅力、持続可能な猫グッズで存在感を示す

西田貴弘氏
コワーキング合同会社代表社員 西田貴弘氏

犬と違い散歩の必要がない、SNS映えする、コロナ禍で猫がもつ癒やしの力が再認識された……等々の理由から、終わる気配のない猫ブーム。キャットフード、グッズなど猫に関連する費用や支出を計算した経済効果「ネコノミクス」は、年間約2兆円にのぼるという試算もあるほど、“猫ビジネス”は過熱しています。

 

「moftech(モフテック)」のブランド名で、猫グッズの企画・製造・販売を手掛けるコワーキング合同会社は、愛猫家におなじみの、ある猫グッズを改良・販売し、業界で確かなプレゼンスを示している企業です。代表社員の西田貴弘氏に、事業内容や今後の展望、東京立地のメリットなどを取材しました。

●ものづくり系コワーキングスペース入居で開発加速
MONO内の工作室
アジアスタートアップオフィスMONO内の工作室、ゆとりのある作業スペースも設けられている
レーザー加工機
木材加工に欠かせないレーザー加工機

まず、西田氏にこの仕事を始めた経緯を聞きました。

 

「文具、オフィス用品などの企画・製造・販売企業でのマーケティングや、保険会社での営業を経て、2013年に独立しました。現在の仕事を選んだのは、自分の愛猫のために、従来にないグッズをつくりたかったからです。ニッチな領域ではありますが、市場的には決して小さくない猫ブームもあり、良質な製品を安定してつくることができれば勝負できると考えました」

 

そこで西田氏が着想したのが、猫の遊具、キャットタワーです。キャットツリーとも呼ばれ、愛猫が室内で運動できるアイテムとして知られています。

 

「ただ、従来の商品は形、高さがほぼ決まっているため、個々の家で異なる室内環境にフィットしなかったり、置く場所が限られてしまったりするケースもありました。そこで、玩具のブロックのように組み立てられ、高さや形状をフレキシブルに変えられるキャットタワーをつくれないかと考えました。また、素材に木を用いることで耐久性を持たせ、多様なインテリアにもなじむアイテムにできないかとの思いもあったのです。そうしたアイデアを形にするため、最初は模型や工作の材料などに用いられ、加工しやすい『スチレンボード』で試作を重ねました」

 

その後、基礎的な部分はできたものの、完成させるためには大きなハードルが待っていました。本物の木材を使って本格的なプロトタイプをつくるには、専用の加工機や、より広い作業スペースが必要です。しかし機械は高額の上、作業場を借りるのにもかなりのコストが必要。そこで西田氏が注目したのが、東京都江東区青海の「アジアスタートアップオフィスMONO」でした。ここは、ものづくり系スタートアップに特化した創業支援施設。先端機械をそろえた工作室や広大な作業スペースを備えています。

 

「比較的リーズナブルな料金でオフィスを借りられる上に、木の加工に欠かせないレーザー加工機や、3Dプリンター、3DCADなども無料で使うことが可能です。私の入居当時にいらっしゃったインキュベーションマネジャーのサポートで、機械の使い方を一から指導いただき、ここに入居してから一気に開発が加速しました」

                                  
●恵まれた環境や助言も活かし、一生涯使えるキャットタワーが完成
にゃんこタワー
木製でほとんどのインテリアや既存の家具になじむmoftech にゃんこタワー
3種類のスタイル
猫の成長、個性に合わせて3種類のスタイルを選ぶことができる。耐久年数は約20年で、猫の平均的な寿命を上回る

そして、1年ほどで完成したのが『moftech にゃんこタワー』です。材料は六角形のシナ材のパネルと、パイン材のポール。それらを組み合わせ、猫の成長や個性に合わせて、自由に形を変えることができます。

 

「猫の誕生からおよそ12ヵ月までは、高さを抑え、パネルを広めにした『Kitten Style』、1歳~10歳頃は活発に運動することを想定して、背の高い『Adult Style』、そして10歳以上は再び低くしてパネルを広げた『Senior Style』と、一生涯使うことができます。組立は簡単で、およそ40分程度で終了。必要な工具も付属しています」

 

moftech にゃんこタワーは、TV番組や情報誌、Webニュース、業界新聞など多様なメディアでも紹介され、愛猫家に浸透。新しいタイプの猫グッズとして、根強く売り上げを伸ばしています。

 

「MONOに入居していなければ、moftech にゃんこタワーは完成しませんでした。都内にスタートアップ対象のコワーキングスペースは多々ありますが 工作機を無料で使わせてくれるところは極めて希少です。また、ほかのものづくり系企業から、忌憚のない意見をもらえる環境も良いと感じています。つくるプロダクトの種類は違っても、基本はものづくりであり、起業家としての目線は同じなので、デザインやコストなど有益なアドバイスをたくさんいただくことができました。もちろん私も同様に彼らに対して率直な意見を申し上げる機会も多く、互いに刺激し合える仲間であると考えています」

                                  
●江東、東京立地のメリット~国内外の優れた人材から成長の糧を得られる
にゃんこカプセル
六角形と四角形の組み合わせでデザインされた多面体の「にゃんこカプセル」
自身が開発した商品
MONO工作室の前で自身が開発した商品と

さらに続けてMONOの魅力を聞いてみました。

 

「東京都が認定するアジアスタートアップオフィスということで、海外、特にアジアのものづくり系スタートアップも多く入居しており、彼らとの交流も財産になっています。深夜でも彼らが仕事に集中している姿を見ると刺激を受けますし、付き合いが深まるにつれて初級の中国語を身につけることもできました。製品の材料を中国から購入する際、自分自身でコミュニケーションできるくらいになれたのは財産です」

 

さらに、かつてMONOに入居していた企業と協働して、週末を利用したスタートアップのリアルな体験イベント「スタートアップウィークエンド東京 2019」に参加。「飼い主向け 留守宅の猫の活動量を計測するIT装置」をプレゼンし、3位に入賞した実績も。これもMONOにいたからこその経験だったそうです。

 

「経済的支援を受ける機会に恵まれていることも大きな魅力です。MONO事務局の強力なアシストによって民間銀行や、江東区の創業支援の融資を有利な条件で受けることができました。東京都の認定を受けており、日本だけでなく海外のスタートアップを支援するMONOで仕事を継続していることで、年々対外的な信用度が上がっていることも実感しています」

 

最後に「東京立地」のメリットを伺いました。

 

「やはり世界に認知されているネームバリューが有利に働くと思います。かつて“ものづくり大国”として世界をリードした日本の首都、東京のアドレスは、海外企業の認知度も高い。moftech にゃんこタワーに加えて、当社製品の猫のプライベート空間『にゃんこカプセル』も木製であり、オーストラリア、中国、香港などから『日本らしさを感じさせる木製の猫グッズ』として注目され、問い合わせが増えています。これも、当社が『Tokyo』にあることがひとつの要因だったと思います」

公開日:2024年(令和6年)2月27日

【企業概要】
  • 会社名:コワーキング合同会社
  • 所在地:東京都江東区青海2-5-10
    テレコムセンタービル東14階
  • 代表:西田貴弘
  • 設立:2013年(平成25年)2月19日
  • 事業内容:ネコ関連商材の企画・製造・販売
  • ホームページ:https://moftech.jp/