ico_imgインタビュー:千住一丁目創業支援館「かがやき」(東京都足立区)

住み続けたい街・北千住発!創業、事業拡大を持続的にサポート

東京芸術センター
「かがやき」は北千住のランドマーク的存在である東京芸術センターの11階にある。北千住駅から徒歩約7分と好アクセスだ

2006年に東京藝術大学、2012年に東京電機大学のキャンパス誘致が実現し、「学生のまち」という側面も持つ足立区・北千住。駅にはLUMINE、丸井など大規模商業施設がそろう一方、駅周辺には、昔ながらの活気あふれる商店街も充実しています。もともと東京メトロやJR、東武、つくばエクスプレスの鉄道4社5路線が乗り入れ、東京都心、茨城、埼玉、千葉方面をつなぐ重要なハブ駅であり、足立区はもちろん、東京北部最大のターミナルとして知られてきました。

 

そんな北千住では、古くから創業支援の動きも活発に続けられています。ここでは2006年開設と最も長い歴史をもつ施設、千住一丁目創業支援館「かがやき」をご紹介。同施設では、2023年9月22日まで入居者募集も行っています。募集概要、施設の特徴、サポート体制などを取材しました。

●BtoBビジネス、IT関連企業も安心できる万全のセキュリティ
エントランス
「かがやき」のエントランス
関係者以外は出入りできないようセキュリティが敷かれている
24時間利用可能
事務所スペース
入居企業募集中の事務所スペース
交流室
入居企業が打ち合わせなどに使える交流室
眺望
交流室から望む荒川方面の眺望

まずは、足立区 産業経済部 企業経営支援課 創業支援係の加藤達郎氏に、施設概要、募集条件などを聞きました。

 

「2006年に、主に芸術文化の発信を行う施設として誕生した東京芸術センターの11階につくられた施設です。部屋数は計10室あり、加えて入居者が打ち合わせなど自由に使える交流室1室が併設されています。今回の募集は4室で、内訳は、賃料+共益費46,000円・18.5㎡が1室、同54,000円・21.8㎡が3室。北千住駅から徒歩7分程度でこの家賃・広さは格安と言っていいでしょう。入居期間は2年間で、審査により1年間に限り延長することができます」

 

募集条件は、1)創業を具体的に計画している方、2)入居日現在、法人設立登記を行ってから3年未満の法人の代表者の方、3)入居日現在、税務署へ開業届を提出してから3年未満の個人事業主の方、以上3つのいずれかに該当する方、とのこと。「かがやき」はセキュリティが厳重で関係者以外の出入りがしっかりと制限されていることから、不特定多数の来場者が見込まれる店舗、教室などの利用はできません。したがって、BtoBの職種、IT関連企業などが適しているそうです。

 

「加えて、募集条件では、入居期間が終了して“卒業”した後もできるだけ継続的に足立区内で事業を展開する意思があることも重視しています。これまでに『かがやき』や東京電機大学創業支援施設『かけはし』を含め足立区の創業支援施設から巣立っていった企業は170を超えますが、その多くが足立区内で事業を継続中です。なかには上野、大阪、静岡、ベトナムに拠点を展開するIT系企業も含まれているのですが、本社は今もかがやきの近くに構えています」

                                  
●法律、経営、知財などの相談窓口「あだち産業センター」に隣接
インキュベーションマネージャー
月に1回、インキュベーションマネージャーと面談をする。写真左は花谷氏

続いて、「かがやき」の魅力について、インキュベーションマネージャーの花谷宏和氏に解説いただきました。

 

「第一に、東京芸術センターというランドマークへ比較的安価に入居することができる一方で、顧客や取引先等が『かがやき』へ入居するスタートアップに対して一定の企業イメージを持つ形でスタートを切れるという点があると思います。また、東京北部最大のターミナル・北千住駅から徒歩7分というアクセスの良さも強みです。4社5路線が乗り入れていることから、都心方面はもちろん、茨城、埼玉、千葉等への営業や打ち合わせに行きやすい。同時に通勤する場所としても便利なので、人材が集めやすいこともメリットと言えます」

 

人材については、足立区 産業経済部 企業経営支援課 創業支援係長の井上祥子氏も、次のように付け加えてくれました。

 

「足立区内には現在、放送大学、東京藝術大学、東京未来大学、帝京科学大学、東京電機大学、文教大学と6つの大学キャンパスがあり、足立区は各大学の特色を活かしながら、さまざまな連携の取り組みを進めています。6つの大学に在籍している総計約17,000の学生さんたちは、将来、足立区内で創業するスタートアップにとって、入社や協業、連携などが期待できる優れた人材の候補である、という見方もできます」

 

そして「かがやき」第二の魅力は、隣接した場所に、法律や経営、知的財産権、税金関係その他の相談窓口を設置している区有施設「あだち産業センター」があることです。

 

「『かがやき』に入居しているスタートアップは、月に1回インキュベーションマネージャーと面談することになっています。事業の理解を深め共に課題を発見し、その解決に必要な支援をしています。この面談の中で領域外の課題が認識された場合は、『あだち産業センター』での各相談をご提案しています。また、『あだち産業センター』をうまく利用することで、産業情報の収集、販路拡大にも役立つと思います」(花谷氏)

                                  
●足立区に立地するメリット~地元関係機関と行政の手厚く継続的な支援
創業するなら足立区で
インタビューに応じていただいた3名。左から加藤氏、井上氏、花谷氏。「創業するなら足立区で!」

最後に、足立区独自の支援事業や体制についてうかがいました。

 

「創業のステージや業種によって、幅広いメニューを用意しています。例えば足立成和信用金庫と協働で実施する『創業者経営力アップ支援事業』は、民間物件を借りた個人・法人を対象に最長2年間、事業所の賃料を補助。毎月の補助上限額は『5万円』または『賃料の2分の1』のいずれか小さい額となります。さらに、足立成和信用金庫、瀧野川信用金庫、城北信用金庫、東京東信用金庫の地元信用金庫の協賛で開催され、最大200万円を補助する『創業プランコンテスト』も行っており、これまでに多くの優れたスタートアップが誕生しています」(加藤氏)

 

足立区内の関係機関と連携し、より地域に根差した形で取り組んでいることも特徴とのこと。

 

「例えば、足立成和信用金庫は創業支援施設『あかつき』、東京電機大学は、先述の創業支援施設『かけはし』をそれぞれ運営しています。『かがやき』を含めた3つの創業支援施設は、年3回、一体となって『創業支援施設合同セミナー』を実施。直近では、インボイス制度や、経営者が知っておくべき計数管理、財務、営業など充実した内容を受講できます。このセミナーでは『交流会』も人気で、足立区内の事業者や足立区内で創業予定の方も参加して、ネットワーク拡大や連携のきっかけを得るケースも見られます。コロナが5類に移行し、リアルの交流会が開きやすくなりましたので、スタートアップ同士のコミュニティがより充実していくことに期待できると思います」(花谷氏)

 

「中小企業診断士の資格をもつマッチングクリエイターが区内企業を訪問するトータルマッチング事業も、足立区の特徴的な仕組みです。足立区内の中小企業を直接訪問し、困り事の解決方法を探るほか、足立区の助成金や、都、国の支援施策の紹介、さらには受発注のあっ旋相談なども行います。あっ旋については例えば、『納期短縮のため、近隣の協力事業者を探したい』『自社にはない設備や技術を持った事業者を探したい』といった相談に応じています。『かがやき』に入居中はもちろん、卒業後、足立区内で事業を継続する企業にとって、とても頼りになる存在だと考えています」(加藤氏)

 

「足立区はアクセス利便性に優れている半面、物価や賃料に値ごろ感があり、荒川をはじめとした自然も身近。起業される方はもちろん、従業員の皆様にとっても暮らしやすく、職住近接も容易なエリアです。大学誘致をひとつのきっかけにイメージアップがはかられ、住み続けたい街としても人気を集めている北千住の『かがやき』を足掛かりに、足立区での持続的な事業拡大をサポートしていきます」(井上氏)

取材日:2023年(令和5年)8月7日

【施設概要】
  • 施設名:千住一丁目創業支援館「かがやき」
  • 住所:東京都足立区千住1-4-1
    東京芸術センター11階