ico_imgインタビュー:港区立産業振興センター(東京都港区)

企業・人・地域を結び、イノベーションを生む産業振興と知の集積拠点

加川恒介氏
港区産業振興課 経営支援係長 加川恒介氏

2022年4月1日、竣工間もない港区の複合ビル「札の辻スクエア」に、中小企業の活性化や創業支援を担う港区立産業振興センターがオープンしました。

 

施設の設立経緯やサービス内容、特徴について、港区産業振興課の経営支援係長・加川恒介氏と、指定管理者の構成団体である㈱キャンパスクリエイトのオープンイノベーション推進部・ゼネラルマネジャーの須藤慎氏に、伺いました。

●区の担当課とインキュベーション拠点が合体、ワンストップ支援体制を構築
札の辻スクエア
駅近立地の「札の辻スクエア」

港区立産業振興センターは、JR山手線・京浜東北線 田町駅と都営浅草線・三田線 三田駅から徒歩3~4分という好立地にある「札の辻スクエア」の9階から11階の3フロアを占めています。同じ建物の8階に港区産業振興課と観光政策担当、4~7階には港区立三田図書館と図書文化財課が入る複合施設です。

 

産業振興課の加川氏が、センター設立の経緯をこう振り返ります。

 

もともと産業振興課は芝公園の本庁舎にありましたが、当時の中小企業との接点といえば、補助金の申請や融資あっせんの際の商工相談などに限られており、「商工会館等を除いて、中小企業の経営者が集まって交流する施設はありませんでした。そこで港区内に新しい産業振興の一大拠点を設けるという構想の下に立ち上げたのが港区立産業振興センターです。地域の商店街や区民の方々にも気軽に立ち寄っていただき、中小企業、起業家、フリーランスの事業者と結びつくハブとなり、さまざまな課題解決を図れる場になることを狙っています。」

 

産業振興課がこのセンターと同じ建物に入ったのを機に、これまでの商工相談などに加え、経営にかかわる多様な相談を受けられる「あらかると相談ブース」が設けられました。中小企業診断士、社会保険労務士、地域金融機関などの専門家に無料で相談できます。

 

「経営に関わる相談であれば、特定の分野に限らず、どんな相談でも受け付けています。内容に応じて、港区の支援制度でカバーできれば当課で対応し、港区では難しい場合は、東京都や東京都中小企業振興公社、国の相談窓口、外郭団体・商工会議所に橋渡しするなど、“水先案内人”としての役割を果たしています」(加川氏)

                                  
●利用自由度の高いコワーキングと最新機器が充実したファクトリーを併設
須藤慎氏
㈱キャンパスクリエイトのオープンイノベーション推進部・ゼネラルマネジャーの須藤慎氏
コワーキングスペースの写真
コワーキングスペース
1時間単位のドロップインから、1日単位、1か月の定期利用(1万8000円~/月)まで、個人も法人もフレキシブルに使えます。登記も可能です。
フルカラー3Dプリンタ
ビジネスサポートファクトリーの目玉となる装置、フルカラー3Dプリンタ
手ごろな料金で利用できると学生から社会人まで好評
説明するのは、㈱キャンパスクリエイト・クリエイティブコーディネーターの永井恵梨氏
電子刺繍ミシンの写真
電子刺繍ミシン
この他にも、アパレル3D着装シミュレーションシステム、パターンスキャナ、昇華転写プリンタなどファッション系のデジタルツールも充実。
ビジネス支援ライブラリの写真
ビジネス支援ライブラリ
「スタートアップ・起業家」「オープンイノベーション・経営戦略」「AI・データサイエンス・IT」といった専門的テーマに沿った書籍類、雑誌、学会誌などを揃えている。

産業振興センターの施設概要について、須藤慎氏は次のように解説します。

 

「メインとなる施設は、独立創業を目指す方、スタートアップ企業、フリーランスなどの活動拠点にできるコワーキングスペースと、モノづくり関連の機器を備えたビジネスサポートファクトリーです。ビジネスサポートファクトリーには、フルカラー3Dプリンタ、レーザー加工機、3Dスキャナなどの先端機器と最新鋭の3D編集ソフトなどを揃え、さまざまな分野の試作品からアート作品まで製作可能です。

 

また、大小のホールから貸会議室、研修室、ワークルームまで、広さや用途の異なる複数の貸出施設が充実しているのもセンターの特徴の1つ。音響、照明、モニターなどの付帯設備も充実し、セミナー、発表会、ワークショップ、フェアなど、多岐に渡る用途に利用できます。月に2~3回以上のペースで交流イベントも開催中です」

 

産業振興センターの運営、イベントの主催をしているのは、指定管理者の「みなと・キャンパス・リログループ(共同事業体)」です。株式会社キャンパスクリエイト、NPOみなと経営支援(港区中小企業経営支援協会)、株式会社リロクラブの3者で構成されています。このうちキャンパスクリエイトは、大学や研究機関の技術移転を通じた産学連携をサポートする国立大学法人電気通信大学TLOという顔を持つのも強みの1つでしょう。

 

「スタートアップ支援に関わる専門書籍などを揃えたビジネス支援ライブラリもありますし、各種の支援制度に関する情報も集まっています。創業支援の相談、海外展開のアドバイザー制度、知的財産の相談制度など、事業計画からいろいろな法律的な面まで、相談しやすく調べやすい環境を整えています」(須藤氏)

 

知の集積拠点であるセンターに訪れれば、何かしら役に立つ情報に出会えるかもしれません。

                                 
●東京・港区に立地するメリット~産官学のオープンイノベーションが発火する街
イベント
産業振興センターで開催されている多彩なイベント

港区立産業振興センターは2022年4月のオープン以来、月100人ペースで登録会員が増え、2023年1月現在、1000名を超えました。これほど人々を引き付ける魅力は何でしょうか。

 

「港区は、ファッション・デザイナー、クリエイター、エンジニア、コンサルタントなど、高いスキルを活かしてビジネスを展開している個人事業者が少なくありません。一方で、大企業やベンチャーキャピタルの事業所も多数集積しています。さらに、慶應義塾大学のお膝元でもあり、東京工業大学田町キャンパスの再開発も進んでいるなど、産官学のオープンイノベーションが生まれるチャンスも得られやすいと思います」(須藤氏)

 

日本国内の外国大使館の過半数が港区に集まり、交流機会も豊富なので、海外ビジネスのコミュニティとのマッチングも期待できます。グローバルに展開を図ろうと考えている中小企業、スタートアップにとっては、立地のポテンシャルは高いのではないでしょうか。

 

「区内には、“3A+1R”(青山、赤坂、麻布/六本木)という知名度の高いエリアが集まっていますが、地名に惹かれて進出したいと思いながら、賃料水準の高さからためらう方も多いようです。しかし、産業振興センターのコワーキングスペースは利用期間の制限はありません。また新たにオフィスを構える場合も『新規開業賃料補助制度』など、開業を支える制度も用意しています。まずはあきらめず、気軽に相談してください」(加川氏)

 

都心に活動拠点を構えるチャンスは意外に身近なところにあるのかもしれません。

取材日:2022年(令和4年)12月1日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスクを着用しております。)

【施設概要】
  • 施設名:港区立産業振興センター
  • 住所:東京都港区芝5-36-4
    札の辻スクエア9~11F
  • 運営:港区、
    みなと・キャンパス・リログループ
  • 設立:2022年(令和4年)4月
  • 支援内容:中小企業・商店街の経営支援、創業・新規事業創出の支援、産学連携支援等
  • ホームページ:https://minato-sansin.com/