ico_imgインタビュー:新宿区立高田馬場創業支援センター(東京都新宿区)

若者が集まる熱量の高い新宿で、交流を促し創業を後押し 新宿区立高田馬場創業支援センター

田中健一朗氏
施設長の田中健一朗氏

JR山手線の高田馬場駅から徒歩2分の好立地に構える『新宿区立高田馬場創業支援センター』は、新宿区内で新たに事業を立ち上げたい起業家、創業して間もない事業者をサポートするインキュベーション施設です。

 

2011年の開設以来10年間に、延べ150人以上の利用者が巣立っていった同センターの特徴や支援内容について、施設長の田中健一朗氏に伺いました。

●交流を促すフリーアドレス型シェアオフィスの先駆け
シェアオフィスの写真
シェアオフィス
利用期間は基本6カ月で、3回まで更新可能(最長2年間)。個室を含めて最大32社(人)が登録できる。年末年始以外、8:30~24:00まで年中無休で利用可
完全個室のオフィスの写真
完全個室のオフィスも2室用意

新宿区立高田馬場創業支援センターのメイン施設となるのが、フリーアドレス10席のシェアオフィスです。都心にありながら、利用料は月額1万円。創業初期に固定費が少なくてすむと利用者からも好評です。他に2つの個室(個室利用時はプラス2万円)、会議室兼商談室、交流スペースなどがあります。

 

「オープンした2011年当時、行政の創業支援施設では個室やブース型が多く、フリーアドレスは珍しかったと思います。ちょうど民間でも“コワーキング”というキーワードが使われ始めた頃ですね。1つのスペースを共用するスタイルのため、利用者同士が自然に顔を合わせ、交流しやすい雰囲気になります。人と出会い、互いに刺激し合う中から新しいものが生まれる環境を提供するのが、当センターの狙いです。」

 

利用者層は、19歳から70歳代まで幅広く、中でも20代から40代がボリュームゾーン。比較的若い人が多いのは、新宿区という場所柄かもしれません。

 

「ここ数年はコロナ禍で少し休止していますが、利用者や利用終了者を対象にした交流会を毎月開催していました。専門家を招いたセミナーや外部の人も参加できる相談会も随時開催しています。相談会は飲食店の開業相談を始め、延べ1000人を超える方にご利用いただいています。」

●創業初期の“足回り”をサポート。資金調達の面でも有利
会議室兼商談室の写真
会議室兼商談室
打ち合わせやセミナー、コロナ禍以前は交流会にも使っていた。
交流コーナー
交流スペース
来客対応や食事・休憩のほか、電話対応やリモート会議にも利用

インキュベーション・マネジャーでもある田中氏は、シェアオフィス内に常駐しているため、ちょっとした疑問や悩みでも、その場で気軽に声をかけて相談できるのも同センターの特徴です。もちろん、創業に必要な知識や実務ノウハウに関する詳しいアドバイスも受けられます。

 

さらに、「利用者が事業に集中しやすいように、創業に伴う煩雑な”足回り“の部分をサポートするのも当センターの重要な役割」と田中さん。

 

例えば、創業時の会社設立にあたって、自宅やバーチャルオフィスを本店所在地にすると、法人登記や金融機関への口座開設にあたって制約が多いのが現実です。しかし、同センターのシェアオフィスは法人登記ができます。しかも『新宿区長の利用承諾書』が信用補完になるため、口座開設やその後の資金調達にも有利です。

 

また、同センターは新宿区の特定創業支援等事業の認定施設です。この事業に基づいて、短期集中型プログラムの「創業スクール」を受講すると区の証明書が交付され、各種優遇措置の対象になります。具体的には、法人設立時の登録免許税の軽減、日本政策金融公庫融資の金利引き下げ、東京都や国の助成事業の応募要件の1つに該当など、メリットはさまざまです。

●東京立地のメリットとは~東京起業しやすい東京。物件も人も、出会いのチャンスが豊富~
新宿区立高田馬場創業支援センター外観
駅近でフットワークも良い
「新宿区立高田馬場創業支援センター」

田中さんが挙げた第1のポイントは、不動産事情です。

「東京は、街が連続して広がっていますね。新旧、大小とりまぜてオフィス物件のバリエーションが豊富なため、事業のステージに合わせて、最初の拠点を始め、成長してからの移転先も見つけやすい。実は、古いビルが多い街ほど創業率が高い傾向があります。創業期は資金面の余裕がないため、築年が古めで賃料の低いオフィスが有難いからです。新宿区内には、そういうオフィスが多く、選択肢も広いと思います」

 

人と出会いのチャンスが多く、成長できる街でもあります。

                                  

「東京は、事業化や経営に関わるキーになる人たちと接点を持つチャンスに巡り合いやすいと思いますね。それは、偶然だったり、身近な人を介したり、意外につながる確率が高い。また、地元では“画期的なビジネスモデルだ”とお山の大将になれた人も、東京に来ると、ありきたりなアイデアだと思い知らされることも珍しくありません。一旗揚げようと身を削って取り組んでいる人たちに揉まれて、自分を磨き上げられる場所でもあります」

 

採用面の優位性も外せないと言います。

                                  

「事業を立ち上げ、大きくしていくには、人の力が必要です。採用面を考えて東京にいる会社は少なくありません。大学や専門学校が多く、若い人をアルバイトで雇いやすいのも大きいですね。当センターのある新宿区内には、早稲田大学、東京理科大学、工学院大学などがあり、こうした大学の出身者が起業するケースも頻繁に見かけます。中でも早稲田大学は、東京女子医科大学と連携した『共同先端生命医科学専攻』を開設したり、ベンチャーキャピタルの『早稲田大学ベンチャーズ(WUV)』を立ち上げたり、起業・創業につながるアセットの源泉になっています。とにかく、新宿は若い人が集まる熱量が高く、刺激的ですね」

取材日:2022年(令和4年)8月24日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスク着用しております。)

【施設概要】
  • 施設名:新宿区立高田馬場創業支援センター
  • 住所:東京都新宿区高田馬場1丁目32番10
  • 代表者:施設長 田中健一朗
  • 設立:2011年(平成13年)
  • 支援内容:シェアオフィスの提供、創業相談、セミナー・イベント開催
  • ホームページ:https://incu.shinjuku-center.jp/