ico_img立地企業事例:株式会社三ツ矢(東京都品川区)

光通信デバイス接合用としても需要高まる「めっき」
第5世代移動通信システム(5G)の基地局もつなぐ

草間社長
「多品種・少量生産で1500社との取引をしている」と語る草間社長

電子機器、自動車、医療、航空宇宙などあらゆる産業を下支えしているめっき技術。

 

現在約1500社との取引を持つ三ツ矢は、顧客の要望に「できないと言わない」探究心と粘り強さで着実に技術力を磨いてきた。次世代のニーズに応じるべく、外部とも連携し開発に勤しむ。

ウェハー
金錫合金めっきの加工例-電子部品で使われる直径300mmウェハー

三ツ矢は1931年(昭和6年)に五反田で創業した(三ツ矢電鍍金工場)。めっき屋の営業として勤務していた草間誠一郎社長の祖父、草間末政氏が得意先の要望を受けて独立に至った。

 

当初は主に海軍が使用する探照灯(サーチライト)のめっきを手がけていたのが同社のルーツで、「軍需品のため非常に高い品質が要求された」(草間社長)

 

当時の工場は空襲で焼失してしまい、疎開工場も進駐軍に接収されてしまったが、戦後に五反田でライターや機械部品のめっき加工を再開。

 

日本電信電話公社(現NTT)向け通信機器部品へのめっきをNECより受注獲得したことをきっかけに、徐々に取引先を拡大していった。

● 厳しい要求にも応え、約90種以上のメッキを扱う

めっきは装飾のほか、耐腐食性や耐摩耗性、電気抵抗など対象物に特定の機能を付加する役割を持つ。三ツ矢では約90種以上のめっきを扱うが、なかでも近年引き合いが高まっているのが金錫の合金めっきだ。微細部品のめっきが可能で、合金比率やめっき厚など厳しい要求にも応える。

 

高温鉛フリーはんだ材料として、第5世代移動通信システム(5G)の基地局をつなぐ光通信デバイスの接合用としても注目される。「同業他社だけでなく、代替技術との競争も課題だ。さらに性能を向上し、採用を狙いたい」(草間社長)と販路拡大に意気込む。

先代社長で3代目の草間英一氏は「どんな難しい要求に対してもできないと言わず、挑戦する」との経営方針を掲げた。今日までこの取り組みを継続してきたことが花開き、幅広い分野の高度なめっき技術を蓄積している。

 

同社は五反田工場、八王子工場を含む4つの工場を持つ。各工場に技術部隊を置き顧客の要望に対応しているほか、工場から独立した研究開発部門も設置している。

● 都内に拠点を持つことで、相談が多く舞い込む地の利
目黒川そば、五反田駅から徒歩10分の場所にある本社・技術センター

世田谷研究所では、既存の技術の引き出しではすぐに実現できない案件について数ヶ月の期間を設け開発を進める。

 

さらに本社内の技術センターでは産学官連携プロジェクトや、より長期的な研究テーマに取り組んでいる。草間社長は「都内に拠点を持つことで、相談が多く舞い込む地の利を実感している」と話す。

 

関東圏内には多くの企業や研究所、大学が立地しており、共同開発や試作、量産においてやりとりもスムーズになるという。

● 工場の自動化、DXを推し進める

多品種少量品をメーンとする同社だが、近年は製造工程の効率化にも積極的だ。2020年に山梨県の甲府工場でロボットを稼働し、めっき工程を自動化した。

 

また、五反田工場では画像処理技術を導入し、従来人の手で行っていた計数作業を代用。作業時間の大幅な短縮につなげた。草間社長は「今後は都内も含め工場の自動化、デジタル変革(DX)を推し進めたい」と展望を語る。

写真:五反田工場では画像処理技術により係数作業を半自動化する東京エレクトロンデバイス社製のパーツカウンター「めばかり君」を導入(品川区の補助金を活用)

取材日:2021年(令和3年)3月4日(オンラインで取材、写真提供は同社より)

【会社概要】
  • 会社名:株式会社三ツ矢
  • 住所:東京都品川区西五反田3丁目8番11
  • 代表者:代表取締役社長 草間 誠一郎
  • 設立:1959年(昭和34年)
  • 業種:めっき加工業
  • 施設:[本社等関連施設]
    土地:991平米、建物:2314平米
    都内に[技術センター]、[世田谷研究所]、[五反田工場]、[八王子工場]があり、都外では、米沢、甲府に工場をもつ
  • ホームページ:https://www.mitsuyanet.co.jp/