「融合が未来を創る~東京に立地するメリット~」開催報告

「東京都企業立地セミナー2019夏」を開催しました。

東京都は2019年7月10日、都内で「東京都企業立地セミナー2019夏」を開催し、慶應義塾大学大学院の中村伊知哉教授が基調講演を、株式会社浜野製作所の浜野慶一代表取締役CEOが特別講演を行いました。

また、大田区と八王子市は、事業拡大や工場の進出を検討する企業等に対し、大規模事業用物件を紹介しました。

東京の持続的な成長を目指す

主催者である東京都産業労働局商工部の伏見充明課長は、冒頭のあいさつで「東京都が備える立地環境は、新たな産業活力を生み出す源泉である一方で、グローバル化による生産拠点の移転など、ものづくり企業の減少が懸念される状況がある。 今後中小企業の成長戦略の推進や、ベンチャー企業や起業家への重点的な支援を展開し、東京都の持続的な成長を実現できるよう、産業集積の維持・発展に向けてしっかりと取り組んでいきたい」と述べました。

テクノロジー×ポップカルチャーで新しい世の中へ

<慶應義塾大学大学院教授・中村伊知哉氏>

慶應義塾大学大学院教授の中村伊知哉氏は、「こわしてつくろう、デジタル×東京」と題して基調講演を行いました。音楽ディレクター、国家公務員、大学院教授など、数々の経歴や渡米経験を持つ中村氏は、「10年前から、デジタルサイネージ(電子看板)を街に普及させる企業コンソーシアムへの取り組みを始め、100社を超える企業が参加している。

プロジェクトを進めるなかで、10年前は目にすることがなかったデジタルサイネージが、今では当たり前のように街に溢れている。世の中でデジタル化が進み、ネットワークが豊かになることで、日本のイメージはマンガやアニメを筆頭にポップカルチャーの国として顔を変えた。なかでも東京は、世界的にも非常にクリエイティブな都市であると世界から見られている。テクノロジー(技術)とポップカルチャー(新しい文化)を組み合わせ、新しい世の中を作ることが我々に課されたミッションだ」と、グローバルな視点で東京の魅力を語りました。

実際、テクノロジー×ポップカルチャーの街を創るプロジェクトが現在進められています。東京都竹芝地区にある1.5haの都有地を、デジタルコンテンツの集積拠点として再開発しており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせて街開きをする予定です。中村氏は、竹芝地区の活性化を推進するCiP協議会理事長として、テック、ポップ、ビジネス、教育をキーワードとした多種多様なプロジェクト構想を紹介。そのほかにも、現代のテクノロジーでスポーツを再発明する取り組みや、ICTの人材育成に特化した「情報経営イノベーション専門職大学(iU)」(※注)の設立など、多岐にわたる活動を行っており、「いま、生き抜くのに大切なことは、新しいものを作ることと、変化を楽しむことの2つだと思っている。楽しみながら、日本をデジタルでスマートな列島にしていきたい」と展望を話されました。

(※注)2020年「iU(あいゆー)」の愛称をもつ同大学は、本校舎は墨田区、サテライトオフィスは竹芝に設立される。中村氏は学長に就任する。

大田区、八王子市における大規模事業用物件の紹介と企業立地の利点PR

(写真上)<大田区・眞野昌子産業振興課工業振興担当係長>
(写真下)<八王子市まちづくり公社・守屋清志事業担当参事>
 

都内自治体による大規模事業物件の紹介では、大田区と八王子市の担当者が登壇しました。

大田区は、羽田空港に近接した「三井不動産インダストリアルパーク羽田の施設内に整備する大田区産業支援施設について紹介しました。産業振興課工業振興担当係長の眞野昌子氏は、「羽田エリアは、陸・海・空の結節点として、アクセス性の高さを誇る好立地である。また、大田区は、国内有数の工業集積地であり、約3,500のものづくり企業が区内に立地している。日本を代表するレベルの基盤技術産業の集積により研究開発の後押しが期待できる産業支援施設としての最適地である。施設の一部を区が借り上げ、工業専用地域として24時間操業が可能。2020年4月入居に向け、安心して操業できる施設として整備していく。23区内でこのような大規模なスペースをご提供できる機会は非常に貴重なことだと自負している」と話されました。

一般社団法人八王子市まちづくり公社は首都圏中央道連絡自動車道(圏央道)の八王子西インターチェンジ付近で約30ヘクタールの産業用地を整整備理する「川口土地区画整理事業(組合施行)」を紹介しました。同公社の守屋清志事業担当参事は、交通・豊富な人材・操業環境の3つを同事業の魅力として掲げた上で、「将来的には北西部幹線道路の全面開通により事業地へのアクセスがさらによくなるだけでなく、沿道における労働力の増加も期待できる。また、八王子市は26の大学等と提携しており、産学連携の可能性も期待できると考えている。さらに、事業継続計画(BCP)の拠点としても適地であるとともに、住工混在を予防し、企業の操業環境に配慮している。2021年度には、八王子駅近くにMICE都市『八王子』を象徴する新しい産業交流拠点も竣工予定で、展示会や商談会など、多目的な活用の場となる予定である。」と述べました。

多様性と可能性に溢れる東京の魅力

<株式会社浜野製作所・代表取締役CEO・浜野慶一氏>

株式会社浜野製作所(墨田区)代表取締役CEOの浜野慶一氏は、「東京・下町 町工場の挑戦!」と題して特別講演を行いました。板金加工メーカーである同社は、「おもてなしの心」を経営理念として、幅広い業界業種の課題解決のサポートを行っています。また、ものづくりイノベーションを支える開発拠点「Garage Sumida」を2014年にオープンし、ベンチャー企業や大学・研究機関の開発支援を推進しています。

浜野氏は、「墨田区は、大田区に次ぐ町工場の集積地域であり、当社としても墨田区で金型製作や量産部品加工、精密板金を行っていた。しかし、時代背景が大きく変わり、国内ではITインフラ・デリバリーインフラが国内に整備されより目に見えない競合相手が増えた。そうしたなか、2000年に工場が全焼して会社経営が傾いたが、下町の人情味溢れるお客様やスタッフ、地域の方々のおかげで持ち直すことができた。常日頃から感謝の気持ちを持ち、お世話になった方々に還元していきたい。そのためにも、夢と希望と誇りを持った活力ある企業を目指している」と述べました。

さらに、「その後、墨田区の優良工場の認定を受けたり、台湾版のグッドデザイン賞や政府が主催する『ものづくり日本大賞』を受賞するなど、優れたものづくり工場として評価を頂けるようになった。海外の人も多く訪れ、毎年工場見学に来ている。

2019年6月末には国連が定めた「零細・中小企業Day」を記念し、ニューヨークの国連本部でスピーチを行った。それに併せニューヨーク市立大学工学部を訪問したが、その際学生から名刺を求められ、ものづくりをやる際には絶対日本に行って技術を学びたいと言われた。海外からも、日本のものづくりは評価されていると感じ、新しい気付きがあった。中にいると埋もれて気が付かないが、枠を外れて見ることにより、見えてくるものがある。そして情報が集まるところには人が、人が集まるところにはイノベーションが起こり新たな文化が生まれる可能性がある。それこそが東京の最大の特徴であり魅力だ。多様性と可能性に溢れる東京、そして中小企業や町工場の力を誇りに、世界に発信していきたい」と締めくくりました。

当日は、事業者の方を中心に多くの皆様にご参加いただき、東京都の企業立地施策について広くご紹介いたしました。