TOKYO

セミナー開催報告 vol.2

「IoT時代の企業変革“東京に立地するメリット”」開催報告

東京都は2018年7月12日、都内で「東京都企業立地セミナー2018」を開催しました。事業所や工場の進出を検討する企業担当者らが参加しました。日野市に工場を持つGEヘルスケア・ジャパンの毛受義雄(めんじょう・よしお)執行役員イメージング本部長が基調講演を、マキノ(本社:東京都府中市)の牧野拳一郎(まきの・けんいちろう)社長が特別講演を行いました。

都内に立地するメリットを活かした事業展開を

<東京都産業労働局・坂本雅彦商工部長>
 

東京都産業労働局の坂本雅彦商工部長は、「昨今はITの発達で、場所を問わずにビジネスができる環境が広がりつつあるが、その一方で、顔の見える距離で顧客の要望にきめ細やかに対応した製品を短期間で納品してほしいという顧客のニーズも高まっている。ぜひ都内で立地し継続して商売してほしい。今日の講演をヒントにしてほしい」と挨拶しました。

「Made in HINO」ブランドの医療機器が世界へ

<GEヘルスケア・ジャパン・毛受義雄イメージング本部長>

GEヘルスケア・ジャパンの毛受義雄氏が「GEヘルスケア・ジャパンの成長戦略〜課題先進国日本から世界へ」と題した基調講演を行いました。工場が日野にあるメリットとデジタル時代のものづくりを語りました。

『GEヘルスケア・ジャパンは1982年に設立され、MRIやCT、超音波診断装置といった医療機器の製品・技術開発、製造からメンテナンスまでを日本国内で行なっています。工場が日野にあるメリットとしては、一例として共同開発をしている慶応義塾大学病院を始めとした大学病院や研究機関との距離が近く、自社のエンジニアが頻繁に医師や診療放射線技師、臨床検査技師と顔を合わせらせることが挙げられます。技術的には高い製品を作ることができても、臨床的に有効なものが作れるかは、顧客と一緒に作れるかにかかっています。また羽田や成田の空港に近いことで、輸出用の機器の輸送コストを抑えられ「Made in HINO」ブランドの医療機器が世界で活用されています。

日野工場は、デジタル時代にあっても無人化が進んでいる訳ではなく、あえて人を使い匠の技を活用して作っているものもあります。工場のメンバーにはセンサーを装着し、どこで誰がどれくらい動いたか分かる様になっています。このデータをもとにヒートマップなどで可視化することで、部品の在庫の位置を最適化したり、思わぬ無駄を見つけたりしています。また、日野工場の取り組みをサプライチェーン全体に展開しネットワーク化することで、突然の納期遅延などにもリアルタイムで対応しています』。

立地による新規取引先の開拓で企業価値向上

<マキノ・牧野拳一郎社長>

次に、牧野拳一郎氏が「東京発!次世代板金精密加工業マキノの挑戦」と題した特別講演を行い、府中市から町田市に主力工場を移転した理由と立地のメリットを語りました。

『マキノの創業は1969年で、半導体製造装置関連部品や通信機器関連部品といった精密板金部品を製造しています。2017年度は50人弱の従業員数で12億円の売り上げを達成しました。同規模同業で比較すると一人当たり2倍ほどの売り上げではないでしょうか。競争力のキーワードは「即日板金」です。オーダーによっては受注した当日に納品することも多く、これを実現するために「人工知能も活用し見積もりを即時回答する」「ディープラーニングにより記憶に頼らない柔軟な生産管理」「最新IoT機器の活用で各工程の対応速度を上げる」「2020年をめどに社内物流を自動化する」「自動倉庫により納品体制の時間短縮化」の5つについて、現在進行形で取り組んでいます。

マキノは約10年おきに工場の増築や新築、移転を行なってきました。受注増による生産スペースの拡大や効率化が目的です。その中で、人材確保のために通勤しやすい場所であることや、周辺地域の見込み顧客の分析などを勘案し町田に立地を検討しました。東京都の町田グランネットタウンという事業を利用し京王相模原線多摩境駅近くの2000坪の敷地を取得しました。

東京都町田市に、積極的なIT投資を行った次世代向上を構えたことのメリットは、大きく分けて4つあります。1つ目が、24時間365日稼働する工場運営ができるようになったことです。近隣の住民の方の理解を得た上で、生産性の向上や製造の自動化を図ることができました。2つ目が、人材の確保です。多摩ニュータウンが近いこと、近隣に多くの大学が立地していることから、優秀な人材の確保を行うことできました。3つ目が、新規取引先の拡大です。中小企業はどうしても知名度が低くなってしまいますが、都心からアクセスのよい都内に工場があることにより、東京に集積している多くの取引先や潜在的顧客に対して自社工場を見てらうことができます。このことは新たな取引や新規顧客の獲得チャンスであり、また、既存取引に頼りすぎてしまうことへのリスクヘッジにもなります。最後に、企業価値の向上です。東京都内に工場があるということが大きなアドバンテージとなり、企業としても働く社員としても高く評価されています。

当日は、事業者の方を中心に多くの皆様にご参加いただき、東京都の企業立地施策について広くご紹介いたしました。

ページトップへ