ico_imgインタビュー:株式会社TS Express(東京都大田区)

中小企業の輸出をサポートする国際輸送の手続き代行とコンサルティング

津川信之氏
株式会社TS Express・代表取締役の津川信之氏

国際輸送の大手企業で20年以上の営業キャリアを積み、40代半ばで独立起業した津川信之氏は、2021年にフォワーダーの会社、株式会社TS Expressを設立しました。「慣れない輸出業務で困っている中小企業や個人事業主をサポートしたい」という思いから、小ロット・不定期の輸出を格安で支援しています。

 

大田区の創業支援施設「六郷BASE」を拠点に活動する津川氏に、起業の経緯、事業内容、東京で起業するメリットについて伺いました。

●Tシャツ1枚から手続き代行、輸出費用は通常料金の最大8割引き
国際物流手配の流れ
国際物流手配の流れ(津川氏プレゼン資料より)
                                  
TS Expressの広告チラシ
TS Expressの広告チラシ
小口の荷主を集めて、ボリューム・ディスカウント(大量購入を理由にした値引き)によるおトクな料金で輸送可能

国境を越えて商品の輸出入をする際には、通関業務や港湾・空港といった保税地域で貨物の受け渡しをする必要があります。専門の資格や免許がなければ、こうした業務はできません。そこで、商品を輸出する荷主の企業や個人と、海運や国際空輸の会社との間に立って、輸出に関わる業務を代行するのがフォワーダーです。

 

輸送する荷物の種類やサイズ・重さ、貿易取引の相手国などによって必要となる手続きの流れは異なります。また、荷主が想定する期間や料金に応じて、適切な輸送手段を選ばなければなりません。フォワーダーは、このような意向を踏まえ、複数の荷主から預かった荷物をまとめて1つの貨物に積み込んだり、小口のクーリエ(国際宅配便)に乗せたり、ベストな輸送方法をコーディネートするわけです。

 

津川氏は、大手フォワーダーの会社で、営業担当者として20年の経験を積んできました。仕事のやりがいや人生の後半に向けての生きがいについて思いを巡らせ、独立起業を決意したそうです。

 

「営業1人で何百社と取り引きしている中で、時間に追われて仕事をすることにストレスを感じていたのが理由の1つです。もう1つはプロセスの違い。大企業の荷主さんは専任の担当者がいて『いくらで送れるの?』というお金の話から入り、安価であればどこの業者でも比較的スムーズに出荷が進むため、営業担当者としてはあまり面白味が足りない。

 

一方、中小企業の場合は、貿易知識のある担当者がいないので『何から初めていいかわからない』状態から入ります。1から全部、手取り足取り教えて無事に取り引きが進むと、すごく喜んでもらえるので、やりがいを感じていました。半面、時間がかかる割に利益は薄く、大手フォワーダーとしては評価されない仕事だったのがジレンマでしたね。

 

ただ、40歳を過ぎて、仕事でストレスをかかえないように生きて行こうという気持ちが強くなってきたんです。それで生涯年収を計算して、これだけ稼げば本当にやりたいことができると見極めて、自分にとってのプライオリティが高い顧客ファーストの仕事ができる起業を選びました」(津川氏、以下コメントは同様)

 

TS Expressでは、個人事業主が送る単品の輸出入も手掛けています。例えば、Tシャツ1枚の越境EC(海外通販)もOK。TS Expressのアカウントを利用すれば、個人事業主に適用される割引のない正規料金に比べて最大8割引きの費用で送れるため、新規顧客もジワジワと増えています。

                                  
●大田区創業支援施設「六郷BASE」で創業。仕事のつながりも拡大
六郷BASE
TS Expressが入居する六郷BASE
六郷BASEの2階にあるコワーキングスペース
TS Expressの六郷BASEの2階にあるコワーキングスペース
同じフロアには3Dプリンターなどの装置を備えた試作室も
1階のオープンスペースはウォークイン(未登録)で利用でき、各種イベントが行われている。

津川氏は、2021年9月にTS Expressを設立し、オープンしたての大田区創業支援施設「六郷BASE」に入居しました。事前に、大田区産業振興協会が実施している創業者支援窓口制度を活用し、相談員から新規開設を控えていた同施設を紹介されたからです。

 

「東京都のスタートアップ育成プログラムや、自宅がある大田区の相談員制度を使って起業準備をしました。会社の登記費用が半額になるのもメリットですし、六郷BASEを紹介してくれたのが何よりですね。シェアオフィスや登記だけできるバーチャルオフィスも検討しましたが、それなりの費用が掛かります。ここは、半個室ブースが月1万円で借りられるので、創業期の固定費を大幅に圧縮できてすごく助かっています」

 

六郷BASEには、フリーアドレスのコワーキングスペース、半個室型ワークスペースのシェアードオフィス、完全個室のオフィスの3タイプがあり、TS Expressはシェアードオフィスに入居しています。

 

「単に部屋を安く借りられるだけでなく、大田区内の企業との関係をつないでくれるのが大変ありがたいですね。この業界では、新規顧客の獲得はコールドコール(飛び込み型電話営業)が一般的ですが、何しろ効率が悪い。この施設を通して、地元の工業連合会などを紹介してもらえると、一度に10~20社と名刺交換できるので、一気に窓口が広がります」

 

これから起業を目指す若手の相談を受ける交流会イベントにも、津川氏は協力しています。スタートアップの卵たちも、将来、TS Expressのお客さん候補になると思って接しているそうです。

 

「起業したての時期は孤独ですから、月に一度でも、自分の経験談を話して『すごいですね』と言われるだけでも承認欲求が満たされる(笑)。初めて商品を輸出するのを手伝ったり、入居者同士で仕事を回し合ったりできるのも魅力の1つです」

                                  
●東京に立地するメリット~圧倒的な潜在顧客の層の厚さ、ビジネス開拓のすき間が豊富
ホームページ
TS Expressのホームページ
      

起業に当たって同業の先輩に相談したところ「3年は赤字を覚悟したほうがいい」とアドバイスを受けたものの、1年目で早くも黒字を達成した津川氏。東京で創業するメリットを次のように話します。

 

「私は名古屋出身で地元の会社に勤めた後、東京に来て働いてみて感じたのは、潜在顧客の数が圧倒的に違うこと。サービスを提供する会社も多くて競合も激しいんですが、お客さんの中で、まだ見切れていないすき間が大きい。毎年毎年たくさんの会社が新しくできるので、そういうスタートアップを狙えば、東京にいるメリットはだいぶ大きいと思います」

 

潜在顧客の母数が大きければ、ニーズに応えきれていないニッチな分野は必ず存在します。そこにリーチすればビジネスチャンスは広がるというわけです。

 

「実は、名前の知れた大企業でも、意外に高い輸送費を払っていたりします。まして、定期的な輸出業務が発生しない中小企業では、割高な料金を支払っていたり、知らずに危ない輸送方法を選んでいたりするので、当社がお手伝いできる余地が大きい。中でも大田区は国内産業が強くて、海外展開を模索している中小企業も多いので、大田区に軸足を置いてやっています」

 

スタートアップ企業や個人事業主にとって、TS Expressは東京から世界へ事業を広げる窓口になると言えるでしょう。

取材日:2022年(令和4年)11月14日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスク着用しております。)

【企業概要】
  • 会社名:株式会社TS Express
  • 住所:東京都大田区南六郷3-10-16
    六郷BASE204号
  • 代表者:代表取締役
    津川信之
  • 設立:2021年(令和3年)9月
  • 事業内容:国際海上航空貨物輸送事業、国際宅配便手配代行、
    国際輸送のコンサルティング
  • ホームページ:https://www.tsexpress.co.jp/