ico_imgインタビュー:Otavert[おたべーる](東京都豊島区)

「日本に住む人すべてを健康に!」~異色のフリーランス管理栄養士

緑川涼佳氏
Otavert代表の緑川涼佳(みどりかわさやか)氏

Otavert(おたべーる)代表の緑川氏は、組織に属さないフリーランスの立場で、「食の持つ多様性、楽しさ、美しさ」と「おいしい感動」を知的に広める管理栄養士。栄養相談やレシピ開発にとどまらず、食品メーカーの商品開発や販売促進のサポート、人材育成まで、幅広く手掛けています。

 

東京を起点に国内外で事業を展開する緑川氏に、起業した動機や事業内容についてうかがいました。

●食を巡る開拓者の使命に開眼、キャリアを積んで独立起業
料理講座
料理講座の様子
丸鶏のロースト
レシピは留学で会得した「丸鶏のロースト」

管理栄養士といえば、給食施設や病院・福祉施設などの給食部門に所属する割合が高いため、フリーランスは少数派です。そんな緑川氏が独立起業するまでには、紆余曲折がありました。

 

女子栄養大学に在学中から、緑川氏は、堅実な就職先を志向するクラスメイトを後目に「日本に住んでいるすべての人を健康にしよう!」という大それた“野望”を抱いていたそうです。「病気や要介護で弱った方を元気にするのは、マイナスをゼロに戻すイメージでした。私の理念はゼロからプラスにすること。例えば、いろいろな病気の原因になる肥満を解消すれば、たくさんの人の健康増進を図れると考え、ダイエット食品メーカーに就職しました」

 

その会社では商品開発部門に入り、カタログの食品表示、営業用ツールの作成までマルチに手掛けながらも、ふと疑問が頭をよぎり始めます。

「いくら良い商品を開発しても、それを買った人しか健康にできません。管理栄養士の卵を育てる学校で私のメソッドを生徒にダイレクトに伝えたほうが、目標達成の近道になると考えるようになりました」

 

そこで栄養系の専門学校に転職し、産官学連携のゼミを担当。大手食品メーカーとのコラボレーションにも携わりました。さらに、異文化を学び地頭を鍛えるためにアイルランドの料理学校にも留学。海外の多様な人々と交流する中で、「個々のレシピ開発ではなく、もっと俯瞰して見た食、栄養、健康に関わる事業に挑戦したいと思い、独立を決意しました」

●顧客の期待を超える成果を目指す食・栄養・健康のトータルサポート
商品開発・レシピ開発の手書きメモ
商品開発・レシピ開発の手書きメモ(秘密保持のため、一部ボカしています)
交流会・料理教室などのイベント・チラシ
としま産業振興プラザ(IKE・Biz)で開催された、緑川氏が講師やおもてなし役を務める交流会・料理教室などのイベント・チラシ(主催は自治体や企業)

現在手掛けている業務のメインは、食に関するトータルサポートサービスです。企業や自治体からの依頼で、コンセプト作り、商品開発、マーケティング、販売支援など、総合的にアドバイスしています。

「おいしいものを作るところから届けるところまで、お客様が困っている課題をヒアリングしながら解決していくのが私の務めです。シェアキッチンの新規立ち上げ、食材の生産者への販売支援、地域の特産品の創出のように、コンサルティング的な仕事もしています」

 

管理栄養士としてのオーソドックスな分野も業務の1つ。「児童の発達支援を行う療育クリニックで、乳児健診の際の離乳食の相談、重症心身障害者の栄養評価、発達障害の子どもを持つ親御さんからの食や栄養に関する相談対応、カウンセリングを行っています」

 

さらに、食に特化した起業塾の講師、開業支援コンサルティング、地域活性化と連携した食の取組の支援、商品開発を担う人材の育成などにも力を入れています。企業における商品開発の実務、学校法人での生徒指導など、さまざまな現場を経験してきたキャリアが強みです。

 

「営業は苦手ですね。ご依頼いただいた内容を考え抜いて、あふれるほどの力を注ぎ、お客様が想定していた仕上がりを凌ぐ成果を出すことが次につながると考えています」

●東京立地のメリットとは~生の情報と人との交流で「直観を確信に変えられる街」
出演中の緑川氏
としまテレビの「豊島区広報番組としま情報スクエア」に出演した際の緑川氏

Otavertの所在地は、JR山手線の池袋駅からほど近いレンタルオフィスです。豊島区を選んだのは、独立を決意してから居住地に近い「としまビジネスサポートセンター」で実施していた短期集中カリキュラム「女性のための起業塾」に参加したのがきっかけ。講義、グループワーク、セミナー、個別相談、交流会など、さまざまなメニューがあります。

 

「セミナーは無料で受講できましたが、とても内容が充実していました。起業を目指す同じ段階の仲間とつながりができたのも心強かったですね」

 

Otavertのクライアントは全国津々浦々、ときには海外からの依頼も舞い込むとか。コロナ禍でリモート会議の機会が増えるなか、それでも緑川氏は、東京にオフィスを構えるメリットを感じています。ポイントは3つに集約されます。

 

1つ目は、膨大な情報が集まる上に、あらゆるジャンルの飲食店を始め、食に関わる施設や企業が足を運べる範囲に存在するため、自分の足で街を歩いて食の流行を肌で感じ取れること。全国から集まる人々も情報の結節点です。

「私自身、岩手出身ですが、東京には地方出身者も多いので、背景の違う人たちとのコミュニケーションの中から自分自身の根幹に改めて気づかせてくれたり、新しいアイデアが生まれてきたりします。肌で感じた“次はこのトレンドが来る”という直観を、確信に変えられる街ですね」

 

2つ目は、起業サポートや助成制度の手厚さ。緑川氏も前述したように、公的サポートを最大限活用しました。

 

最後は、緑川氏ならではの視点。

「トレンドを意識した仕事が多いせいか、国内外どこに行っても東京の住所を書いた名刺を出すと、ビジネスの共通言語として商談にスムーズに入りやすいとか、受入れてもらいやすい気がします。」

会社組織の看板がないフリーランスにとって、「TOKYO」は、国内外にも通用するセルフブランディングのパワーの1つになるのかもしれません。

取材日:2022年(令和4年)9月16日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスク着用しております。)

【企業概要】
  • 商号:Otavert(おたべーる)
  • 住所:東京都豊島区東池袋1-34-5
    いちご東池袋ビル6階
  • 代表:緑川涼佳(みどりかわさやか)
  • 設立:2018年(平成30年)3月
  • 事業内容:食に関するトータルサポート、ヘルスケア・栄養相談、人材育成
  • ホームページ:https://www.otavert.com/