ico_imgインタビュー:LIFEHUB株式会社(東京都台東区)

「人間の機能進化」を実現する次世代モビリティ開発で起業

中野裕士氏
LIFEHUB株式会社 代表取締役CEO中野裕士氏

LIFEHUB株式会社は、2021年に起業したモノづくり系スタートアップです。ロボティクスを始めとする先端テクノロジーを駆使して、足の不自由な人々を物理的・心理的な制約から解放する次世代のイス型モビリティを開発しています。

 

代表取締役CEOの中野裕士氏に、起業の経緯や製品の特長、将来の展望について秋葉原エリアにある本社オフィスで伺いました。

● 小学生以来の夢をカタチに。多彩なキャリアを経て創業
次世代イス型モビリティ
コンパクトで洗練されたデザインの次世代イス型モビリティ

中野氏は、小学生時代から機械いじりが好きで、工場の生産ラインを省力化する機械装置の会社で成功していた祖父の後ろ姿を見ながら、「将来は自分で機械関係の会社を作りたい」と考えていたそうです。中学卒業後にロボコンの盛んな高専(工業高等専門学校)に進学してからも、「他人と同じことはしたくない」と、仲間を募ってサークルを立ち上げ、自作の電気自動車でレースに出ていました。

 

大学院で博士号を取得した後、総合電機メーカーに就職して自動運転の制御システムの開発を手掛けつつ、歴史ある大企業の実像を学びます。そして、ドローン系ベンチャーに転出してプロジェクトの立ち上げから製品化まで一貫して携わるなど、モビリティ専門家として様々なキャリアを積み、いよいよ独立を果たしました。

 

創業の直接のきっかけは、2020年に「TOKYO STARTUP GATEWAY」という東京都主催のビジネス・コンテストにエントリーしたこと。そこで知り合った人脈を通じて、投資家から出資を受けたのを機に、現・取締役CTOの野宮和洋氏と2人で2021年1月に起業したのがLIFEHUB株式会社です。

● 電動車イスの概念を変える“二本脚で立って動けるモビリティ”
次世代のイス型モビリティ
座った状態から約50cm立ち上がる。
半径40cmの範囲で方向展開でき小回りも利く。
独りでエスカレータにも乗れる
独りでエスカレータにも乗れるので、
エレベータを探し回る必要もない。

中野氏が目指すのは「人間を身体的な制約から解放して、より進化した機能を獲得できるようにする」こと。その第一弾として開発したのが「足の不自由な方が健常者と同じような生活ができるようにした次世代のイス型モビリティ」です。

 

従来の電動車イスは、イスに車輪をつけて移動できるようにした“乗り物”の延長線上で発想されたものがほとんど。LIFEHUBの独自性は、人間の脚のしくみをメカニカルな構造に置き換えて、関節の伸縮動作によって上下に動ける機能です。いわば身体に装着する義足のように、自分の身体の一部になるイメージと言えるでしょう。

 

「座った状態で低い視点にいる車イスのユーザーは、常に頭上を通り過ぎていくヒトやモノからストレスを感じるそうです。立ち上がってみんなと同じ目線になれるだけで窮屈さから解放され、自由を感じて活発に動けるようになるのではないでしょうか」

                                  

ファーストモデルは2023年末頃に日本限定での販売を予定しており、2025年には普及版のグローバル展開も計画しています。二足歩行で交互に片足を上げ下げして階段を昇降する機能を持った高機能モデルも、2026年以降に投入するそうです。

                                  

パーソナル・モビリティ市場が急速に伸びる中で、中野氏はさらに次のフェーズも頭に描いています。
「ロボティクスやAIといった高度なテクノロジーを活用した機械で身体を進化させ、広く健常者向けにもサービス化する展開を考えています。例えば、腕や脚の筋肉を増やして体力を補強する、人工的な眼球で視力を回復するといったサービスです。我々は、これを“AaaS(Augmentation as a Service:身体拡張サービス)”と呼んでいますが、その世界でリーディングカンパニーを目指します」

                                  

● 東京は優秀な人材が集まり、資金調達面も有利
本社内
本社内の作業風景

コロナ禍で在宅ワークが普及し「ビジネス街のオフィスは不要になる」という声もあります。そんな中で、LIFEHUBが本社を秋葉原エリアに構えた理由も聞いてみました。東京に立地するメリットを3つ挙げています。

 

第1は、モノづくり企業としての必然性です。「当社は、ハードウェア・スタートアップでモノを扱いますから、リアルな拠点は欠かせません。1つの場所で仕事をしていると、コミュニケーションも密にできるので、リモートメインで仕事をしているよりも開発スピードが速く、効率も高い。しかも、秋葉原エリアは電子部品を手に入れるのに非常に有利ですね。最近は半導体不足でもありますが、地元の商社を通じて、必要な部品はアマゾンよりも早く手に入ります」

 

2番目は、採用面です。「東京は、技術的にハードルの高いビジネスで即戦力となる優秀な人財が豊富ですから、創業間もないスタートアップに参加している人財も獲得できます。社員の通勤面から、交通アクセスの良さも重要です」

 

最後は、企業の成長に欠かせない資金調達。「ベンチャー・キャピタル(VC)は都心5区、特に港区や渋谷区に集積しているので、創業当時はいくつものVCの門を叩いてプレゼンするのに、近いのが有利でしたね。最近は、さすがにリモート会議が増えましたが…。それでも、取引先との会議や、イベントで知り合ったスタートアップの仲間たちとの会合など、対面しての意見交換や知識の共有の中から得られる情報は貴重です」

 

本社内で「機能開発から設計、部品組み立て、製品評価まで」を行うため、騒音や振動を気にせずモノづくりができる地下フロアを苦労して探したとか。東京は事業用物件が豊富なのも有利。

 

LIFEHUBの社員も14名まで増え、現オフィスのキャパシティも限界に近づきつつあるため、近々、都内での増床も検討しているそうです。

取材日:2022年(令和4年)8月25日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスク着用しております。)

【企業概要】
  • 施設名:LIFEHUB株式会社
  • 住所:東京都台東区上野3-2-4 B1
  • 代表者:代表取締役CEO 中野裕士
  • 設立: 2021年(令和3年)1月
  • 事業内容:身体拡張デバイス、モビリティ製品、医療・福祉機器の研究開発及び
    関連サービスの提供、機械の設計・開発に関する事業
  • ホームページ:
    https://www.lifehub.co.jp/